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【書籍】ドキュメント 山の突然死

先輩のライターさんが本を出されました。

「ドキュメント 山の突然死」 柏澄子
山と渓谷社刊

<本書帯より>
中高年登山者の増加に伴い、心筋梗塞などの病気による突然死が増えている。突然、襲われるこうした致命的な事故から、5件の事例を取り上げ、その危険因子を探り、未然に防ぐ方法を検証する。

タイトルどおり、山における突然死(心臓病や脳疾患など)について、過去に起こった事例を医学的なアプローチから取り上げています。出版されたことを聞き、書店に走り、仕事の合間をぬって読み進めました。…いろいろな立場で胸に染みました。

もの書きのひとりとして。
 執筆にあたり、彼女は入念な取材をしています。突然死に遭遇した山仲間、遺族、診断をした医師。この取材は本当に気をつかい、ときに辛い思いをしたのではないかと思います。ガイドブックのお店取材と違い、「積極的に話題にしたくない」ことを人から聞くのは大変なことです。とくに人の死に関することです。

 決して情緒的になったり憶測でものを断じるのでなく、ひとつひとつの事実、医師たちの見解を丁寧に積み上げていく。口を開いてくれた関係者の気持ちを無にしないよう、取材に心を尽くし、入念な調査をする彼女の姿を、この本は感じさせてくれます。

山屋のひとりとして。
 山で死ぬというのは、決して他人事ではないのだと。もちろん滑落とか雪崩とか、ある程度危険を承知して出かける山行でもそうですが、突然死は山の難易度とかジャンルをとわず、やってくるようです。自分も中高年リーチの年代となり、一緒に山に行く人間も同様に中高年になっています。パートナーが死につながるような病状に山中で陥ったとき、私は彼を助けることができるか? そして私がそうなったときは? 

 突然死のリスクを減らす方法についても、言及されています。いわく、適度な運動と休養、栄養バランスのよい食事、規則正しい生活、ストレスをためない、定期的な健康診断…。耳のイタイ言葉が続きます。当たり前のことを当たり前にすることで、突然死のリスクは減る。…しかし、自分をかえりみて、そうでない状態で山に入ることのなんと多いことか。ときに仕事でいっぱいいっぱいの状態で、睡眠もあまり取れずに山に向かう。「ちょっとぐらい体調が悪くなっても死にはしない」そう思っている自分の甘くあさはかなこと。

 同じように思っている山仲間に、読んでもらいたい1冊です。
by toshizo-Ni | 2008-07-05 21:59 | 山や岩のこと。

山と着物とビールをこよなく愛する五十路ライター・ニシの日記です。徒然なるままに日暮らし、パソコンに向かって仕事のこと、山のこと、あれこれ思ったことを書き散らしています。


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